秋季大会個人発表題目変更のお知らせ

2023年10月22日の秋季大会個人発表につきまして、。
谷口紀枝氏の発表タイトルが変更されましたのでお知らせいたします。

【変更前】「新聞連載小説『うき世』から映画『うき世』へ―― 鏑木清方 の挿絵とその受容に関する一考察」

【変更後】「新聞連載小説『うき世』から映画『うき世』へ――鰭崎英朋の挿絵とその受容に関する一考察」

また、題目の変更に伴い、要旨も以下の通り変更となりました。

 柳川春葉原作『うき世』は、大正四年(一九一五)七月から大正五年(一九一六)四月にかけ「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」に連載された家庭小説に類される作品であり、婚姻に関連する家族問題、登場人物の相関関係、家族問題の大きな原因となる金銭事情を中心に、家庭内の難題に翻弄され、悲劇的な立場に追い込まれる主人公早苗の境遇を情緒的に描きつつ展開する。小説は長編であるが、その描写の大部分は、家族間または友人との間で交わされる口語話体による会話で成立しており、小説内で描かれる空間も、ほぼ登場人物の周辺に限られるという特徴をもつ。そして、小説とともに毎日掲載された鰭崎英朋の挿絵においても、人物描写が中心であり、相手を取り替えながら繰り広げられる会話劇を視覚的にも捉えられる紙面となっている。
 本発表においては、このような人物中心に展開する特性をもつ小説『うき世』の近世的とも認識される物語空間を確認した上で、そこに添えられた挿絵が読者にどのように響いたのかについて検証するとともに、本作を原案に製作された映画についても言及していく。日活の向島撮影所で作られた映画『うき世』は、連載終結を待たず、大正五年三月に浅草オペラ館において封切られた作品であるが、その映像には、鰭崎英朋の挿絵との相関性が認められる。主人公早苗を演じる人気女形俳優、立花貞二郎の立ち振る舞いと、英朋の描く清楚な早苗の姿は時に重複して映るのである。本発表の目的は、映像資料『うき世』も取り上げることで、小説『うき世』の説話空間が構築されるにあたり大きく関与したと思われる鰭崎英朋の挿絵が、読者の想像世界を超えて映画製作にまで影響を及ぼしていた事例を報告、検証することにある。

ご確認のほどよろしくお願いいたします。