『日本近代文学』第106集特集「文学史はどこから来て、どこへ行くのか」のお知らせ

日本近代文学における文学史は、1970年代以降、歴史主義批判の視点から相対化されていった。しかし、それから半世紀近くが経ち、そうした立場もまた現在、相対化されたように見える。結果として文学史は置き去りにされたまま総括が為されず、現在、文学の〈衰退〉があたかも自明のように語られている。それは、高校国語における文学軽視の動きなど、文学に対する僻見が蔓延する状況と関わるものともなっている。本特集では、改めて文学史、文学と文学研究、またそれらを取り巻く状況について考察したい。

明治期から既に様々に構想されてきた日本近代文学史は、第二次世界大戦後に至って日本の近代化そのものへの批判意識に基づき再編された。本誌も発刊当時の1960年代や70年代の特集を通して、文学史を一大テーマとしてきた。だが、文学史が語られなくなったことと、文学自体を〈衰退〉と捉える傾向は深く関わっているはずである。そうであれば、第一の問題設定として、文学史の個別的、具体的な成立過程を再度検証し、文学と文学史の関係性を捉え直すことは大きな意義を持つだろう。

かつての文学史が担っていた役割―教養として共有できるプラットフォームは、もはや容易に成立するものではない。文学、文化の全体像を把握することは困難であろう。そこで、第二の問題設定として問いたいのが、文学史の可能性、あるいは不可能性である。文学史の更新、再構築、または代替物は可能なのだろうか。それとも文学史を否定した上で、文学研究を行っていくべきなのだろうか。

作家、表現など従来の視座に加え、評論、国語教育、ジェンダー、植民地文学、外国文学、大衆文学、サブカルチャーなども含めた個別具体的な事例を通じた研究も、俯瞰的視座からの事例横断的な研究も歓迎する。

会員各位の意欲的な投稿をお願いしたい。


※106集の締め切りは2021年10月1日(金)。郵送に限り当日消印有効。
※分量等の様式は『日本近代文学』投稿規定に準じます。なお、投稿に際しては「第106集特集論文」と明記してください。