「標準的な論文書式の推奨に関わる学会員コメントの受付」の結果報告

 

 学会として推奨する論文書式の導入について、2025年4月1日から6月2日まで学会員コメントを募集しておりました。コメントをお送り下さった皆さま、ありがとうございました。

 今回、6名の方からコメントの投稿を頂き、5名の方が賛成、1名の方が反対、という結果でした。編集委員会としては、これを受けて、それぞれのご意見を踏まえて修正した形で、書式の推奨を開始いたします。新しい投稿規程・執筆要領については、会報143号、機関誌113集をご覧下さい。もっとも、今回導入するもので確定ということではなく、今後も継続的に検討を進めて参ります。

 ここでは、今回頂戴したご意見を紹介しておきます。まず、「著者」「版元」「出版年月日」という情報の記載には必ずしもそぐわない出版物もあるため、書式に従おうとすることによって弊害が生じる場合がある、という重要な指摘を頂きました。この問題については、書式に「従う」などの強制力を感じさせるニュアンスのある表現を避け、扱う資料の実態に合わせて執筆者が書式についても適宜工夫するできることを明示しました。執筆者ごとの基準によって書式を統一して下さればその書式を尊重いたします。

 引用する際にページ数を記載することについては、研究倫理(学術的論文における検証可能性の担保)という観点からは、特に重要だろう、とするご意見も頂きました。一方、本学会の研究分野で扱う文献にはノンブルの有無や用い方が現代の出版慣行とは異なる事例も少なくありません。推奨を越えた強さで求めることでかえって弊害が生じる場合への対応との間でバランスを取りながら、まずは、基本的には検証可能性の担保の観点からもページ数を記すことを書式に含める形で導入したいと考えています。

 「巻号」の表記について、論争や連載小説などの進行を追う場合、巻号まで論文中で表記することは煩瑣で読みづらく、長い刊行年を持つ雑誌の巻号の記載は、注であっても不要ではないかとのご意見も頂きました。ただ増刊号が刊行される場合など、巻号が示されないと引用された文献が特定できない場合もあります。そこで、今回推奨する書式としては、巻号を示す形としようということにしました。

 「書名には『 』を用い、論文および記事には「 」を用いてください」の点についての照会も頂きました。今回、この点を「『日本近代文学』執筆要領」「二」(二)で、「書名には『 』を用い、記事(作品、論文も含む)タイトルには「 」を用いてください」と変更してあります。【例】の②以下にある「記事タイトル」には、作品タイトルも含まれるとお考えいただきご対応下さい。

 提示された程度の書式ならば既に通常の大学・大学院での教育で十分対応できているのではないかというご意見も頂きました。おっしゃる通りとも存じます。ただ本誌で推奨される書式が、大学・大学院で論文やレポートを書く学生にとってより明確な指針となるのではないかと考えています。

 また、書式に推奨に伴い、同程度の論文の質を保つには文字数上限を増やす必要が生じるだろう、とのご指摘もありました。文字数上限を変更することは機関誌発行のための予算の問題とも関わりますので、総会での議論が必要になる可能性もありますが、検討したいと考えています。

 今回の書式を導入しても、人文学の他の学問分野や英文論文等でよく見られる書式とは、縦書き・横書きの違いや、脚注と著者年方式の違いなど、なお一致しない点が多く残るが、本分野に固有の書式をどこまで維持するべきか、という問題提起も頂きました。各学問分野で慣行となってきた書式には、その学問分野特有の事情も関わっており、そのことともあわせて慎重に考える必要がありますが、この点も、引き続き検討が必要であると認識しています。

日本近代文学会編集委員会